音楽家のジストニア:発症の事例~後編
- ハートフルギター教室
- 2018年2月6日
- 読了時間: 2分
更新日:2019年12月28日
「読譜しながら弾くべきフレーズを選択し、足元のエフェクターを操作しながら周りの奏者の音を理解し、押弦力やピックタッチを微調整しながら、楽曲のムードに合わせたプレイをする」

マルチタスクを可能にするギタリストの脳は、かなり特殊な働きをしています。
膨大な時間トレーニングを積むと、大脳の可塑性 により、神経系に機能的・構造的な変化がもたらされ、視覚・聴覚から得た情報が運動イメージとして処理できるようになっています。また、小脳に蓄積された運動プログラムにより、考えずとも指が動くようになっています。
ただ、トレーニングが全てプラスの神経系変化を生むわけではないのです。
その要因の医学的見解は諸説ありますが、前回の記事(私自身の経験)と、ハートフルギター教室に訪れたジストニア患者さん(2018年2月5日時点で24名)の話を総括すると、いくつかの類似点が見られます。
① 演奏フォームの変更
② 練習時間の増加
③ 演奏環境の変化
④ 上記による精神的・身体的ストレスの増大
上記の前後に、軽い手指の動かしにくさが起こります。これがジストニアの初期症状なのですが、「一時的なスランプだろう」という誤った自己解釈により、現状を打破しようと練習を続け、取返しがつかなくなってしまうのです。
最終的には、随意運動(意図した動きを行う事)を行おうとした際、不随意的(意図しない)な筋収縮が起こり、まともな動作が行えない状況に陥ります。演奏時だけに起こる場合から、日常動作にまで及ぶ場合、また罹患する部位も指1本の場合や腕全体に見られるなど個人差があるのも、この疾患の特徴と言えるでしょう。
さらに下記の書物らによると、
「変化しすぎた脳の回路」という表現も見られます。


音楽家の脳が複雑な働きをしている事、先天的(遺伝的)または後天的(練習法や習慣)な要素での絞り込みが難しい事から、明確な発症メカニズムは未だ解明されていないのが現状です。ただ急速に研究が進歩している段階なので、ここ数十年のうちには次のステップへ進む事が期待されています。
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