- ハートフルギター教室
なんちゃって「エイジド/レリック」のやり方(レスポール編)

過去の記事 で紹介したレスポールが、とうとう完成に近づいてまいりました。塗装を終えたところで、いよいよ「エイジド/レリック」の加工を施していきます。

・エイジド(Aged) ・レリック(Relic) ・ヴィンテージ(Vintage) メーカーやブランドにより言い方は異なるものの、これらは「長年にわたり使い込まれた感を施す」といった加工です。Gibson は Aged、Fender は Relic として、通常仕様の製品より、20~30%ほどのアップチャージがみられます。参考までに下のレスポールは、ギブソンの名工 Tom Murphy 氏によってペイント&エイジングが施された個体です(掲載ページ)

私は初めてエイジングにトライする「ド素人」なわけですが、何名か詳しい人にやり方だけは聞いておきました。家にあるものでできるし「ふ~ん、カンタンそう」と高をくくっていましたが、思いのほか難航(そりゃそうだ…)

↓

塗装を剥がすことはできましたが、さすがに着色作業はできないので、昔ながらの「固いラッカー」でリフィニッシュを依頼するところからスタート。

・ドライヤー
・ベルトのバックル
・研磨剤(コンパウンド)
・サンドペーパー
・ゴム製ハンマー
・瞬間冷却スプレー
・電動ヤスリ
塗装を終えたギターに、これらを使い疑似的な経年変化を施していきます。作業の際は「塗料を削った粉塵」が舞うので、バスルームに新聞紙などを敷いて行いました。まずはウェザーチェック(塗装表面のヒビ割れ)の作り方をみていきましょう。

ヴィンテージギターの外見的な特徴の1つは、ウェザーチェック と呼ばれる塗装表面のヒビ割れです。木材と塗装面の伸縮率は異なるため、経年(数十年というレベル)によって、また気温/湿度の急激な変化にさらされた場合に生じるとされています。ということで、ドライヤーと瞬間冷却スプレーを交互に用いてウェザーチェックを少しずつ入れていきます。

↓

なるべく細かなヒビ割れを作るコツは、狭い範囲を時間をかけてできるだけ高温にし、そこを一気に冷やすことです。スプレーを吹きかけた直後に「霜」ができ、それが消えていくときにパキパキと音を立ててヒビ割れていきます。今回はギター全体にウェザーチェックを作るのに、500mlの冷却スプレーを5本も消費するハメに…(実際の作業時は、ピックアップなどのパーツ類は全て取り外してから行いました)




次に塗装の剥がれや打痕を再現していきます。衣服や肌との摩擦で剥げた塗装、ベルトのバックルによるキズ、イスや機材にぶつけた痕…。これらにリアリティを持たせるのは難しいですが、工夫しながら行ってみました。


ベルトが当たったキズの再現には、バックルをゴムハンマーで打ち付けて作りました。位置取りをランダムにしようとすると逆に不自然になるので、打痕を重ね合わせたりしながら、かつ力加減を変えながら自然な仕上がりを目指しました。



身体や腕との摩擦で剥げた塗装の再現には、120~240番くらいのサンドペーパーを使用しました。色を残すゾーンとの境界に「自然なギザギザ感」を出すため、部分的に「千枚通し」や「カッターナイフ」などでチマチマ剥がしました。メダルプレートは プレーンなもの に替えた方が良さそうです…



ボディのエッジ部分は、電動ヤスリを利用して削りました。これも力加減が難しく、チョンと触れるくらいの作業を少しずつ繰り返してリアリティを出していきました。
ペグやブリッジなどの金属パーツは、軽くサンドペーパーで削った後、そこにサンポールを少量ずつ綿棒で塗布しました。1日もすれば、良い感じの腐食感が得られます。



最後に塗装を剥がした部分をコンパウンドで磨き、周辺に程よく馴染ませていくことで「今、やりました感」を軽減させます。


素人作業にしてはよく頑張りました。腕や経験がなくとも、イメージとやる気があれば何とかなるものです。「何でそんなことするの?」と、こうした加工に否定的な人もいるかと思いますが、私は子供の頃からモノを分解したりカスタマイズするのを我慢できない性分です。それをギターでもやってみたいと思う気持ちがずっとあったので、今回時間ができたタイミングで実践してみました。このレスポールに対する愛着は高まり、好みのサウンドを手に入れたという 偽薬効果 も抜群です。もちろん演奏することが楽器本来の楽しみ方ですが、こうした部分に手を伸ばし、自己満足の世界に浸るのも時には良いのではないでしょうか!?

